高血圧を始め、様々な生活習慣病の治療が始まる端緒となるのが、日本人の多くが受診する健康診断の「基準値」ですね。この基準値が「健康」か「病気」かを見極める視界線となります。

ところが、健康診断や人間ドックで”健康の判断基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜けているように思います。

長年、健康基準に関する研究を行っている東海大学医学部名誉教授で、「血圧147で薬は飲むな」著者の大櫛陽一氏が指摘しています。

大櫛氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の検診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表した。その数値が検診の基準値とかけ離れていたため、各専門医学会からは猛反発が巻き起こった。

しかし、大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の検査結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。

大櫛氏が調査したデータの中から、「血圧」についてみて見ましょう。

これまで高血圧の治療を受ける患者が目標とする血圧は、75歳未満なら140/90(最高血圧/最低血圧mmHg)未満とされていたが、2019年4月に日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドラインの改訂を控え130/80未満に変更されました。

しかし、「大櫛基準」では、血圧65歳男性なら上が165、下が100までが基準範囲(正常値)で、そもそも高齢者は、ある程度血圧が高くなければいけません。年を重ねるにつけ皮膚がかさかさになって硬くなるとの同様に、血管も硬くなっていきます。

これは動脈硬化ではなく糖化という細胞の老化によって起きる現象だという。

硬い血管を通して血管を送り出すには、血の勢い(血圧)も強くなければいけません。血圧が年齢によってある程度高くなっていくのは「正常」と言えますね。だからこそ血圧の健康基準範囲も、年齢ごとに見る必要がありますね。

大櫛氏は、年齢ごとの血圧の「大櫛基準」を下回ると起こるリスクについてこう話されています。

「体内では、脳が最も多くの血液を必要としていますが、問題なのは脳が血液を送り出すポンプである心臓よりも上にあることです。日中行動している時などは、重力の抵抗を受けているので、上向きに血液を送り出すには、高齢になるほど強い圧力が必要になる。圧力が弱まって脳に血が巡らないと、めまいや貧血、最悪の場合、脳梗塞の原因にもなる。」

大櫛氏が特に警鐘を鳴らすのは、今回のガイドラインの改訂で目標値(降圧目標)が変更されることで降圧剤を処方される人が増えるということだという。

「私の推計では、降圧剤の服用を勧められる治療対象者はこれまで約1,600万人だったのが、約4,000万人に増えます。複数の研究や調査により、降圧剤で20以上血圧を下げると脳梗塞の発症率や死亡率が高まることが分かっている。急激な血圧降下により血流が悪くなり、血栓で脳の血管が詰まってしまうのです。
私が福島県郡山市の約4万人の男女(平均年齢約62歳)を平均約6年間追跡調査したところ、血圧180/110以上の人で、降圧剤を使って血圧を最大20以上下げた人は、使わなかった人より死亡率が5倍も高いという結果が出ました。」

ちなみに、私は今年5月で75歳になりますが、血圧の数値は170/100でいたって元氣です。

参考になれば嬉しいです。